「宙くんて、
もしかしてキスしたこともなかった?」
今日もこの前もキスしなかった
「キスは…ある」
あるんだ
やっぱり私に気持ちがないだけか…
「へー、好きだったの?
その子のこと」
「うん…好きだったと思う
あの時は…」
好きだからキスしたいんじゃない?
いつかの初々しい気持ちを思い出した
「何歳の時?」
「14、中2の時」
「初恋?」
「うん」
「どんな子?」
「恥ずかしいから、いい」
「恥ずかしくなんて、ないよ」
「晴さんが恥ずかしくなくても
オレが恥ずかしい」
「本気だったんだね」
「…わかんない…」
中学生ってそんなもんか
「なんで、別れたの?」
「彼女が転校した」
「それは、悲しいね」
「キスもやっとしたのに
その子が転校したら
オレとの子供を妊娠して転校したって
噂が広まって…
それから人と付き合うのこわくなった」
「そーなんだ…
それから、彼女いないの?」
「高校入って
先輩に告白されて付き合ったけど
やっぱりこわくて…
キスもできなかった
それで、すぐ別れた」
「そっか…」
きっとモテたよね
背も高くて整った顔立ち
優しそうだし
話してて嫌な感じはしない
「その後、また好きな子できて
今度はオレから告白して
高2の時、同じクラスの子だったんだけど…」
ベッドの中で
私に自分の恋の話をしてくれてる宙くん
綺麗だな…って見惚れた
ホントは誠実な子なんだろうな
「今度は、うまくいったの?」
「いかなかった
その子、ホントは他に好きな人いて
無理にオレと付き合ってくれてた
別れた後も、結構がんばったんだけど
結局実らなかった」
純粋でキラキラした恋愛してたんだね
なのに私とこんな関係
「次の恋ができないのは
まだその子に未練あるとか?」
「ないかな…
この前、結婚したんだ
2次会行ってきた」
「まだ仲良いの?」
「うん、友達」
私はあの人と
友達でもいられなかった
もぉ、好きじゃない…
そう言われたから
「ごめんね
こんな見ず知らずの私が
宙くんの大切な思い出聞いちゃって…」
「あ、スミマセン!
オレもつい話してしまって…」
宙くんがまた恥ずかしそうにした
「ごめんね
宙くんとこんな関係になっちゃって…」
最初は彼を疑って
ヤリモクとか思ったけど
こんなに純粋な彼を
私の都合に付き合わせてる
謝罪するのは
私の方だ
「別に、オレも後悔してないから
大丈夫です」
彼はそう言ってくれたけど
自分が不甲斐なさすぎて
彼を見れなかった



