僕等はきっと、満たされない。


「晴夏、そのコート似合ってるね」



「うん
気に入ってるの
誰が選んでくれたんだったかな…」



大好きな人が選んでくれた

去年買ったベージュのコートを着て

冬の京都に来た



秋の京都も

宙と来た


紅く染まった京都

綺麗だった



「何ヶ月も経ってないのに
ぜんぜんちがうところに来てるみたい」



「冬も綺麗でしょ」



「うん
雪、降るんだ」



「うん
冬の金閣寺は1年で最も綺麗なんだって

晴夏、寒くない?」



「うん、このコート温かいから大丈夫」



「寒いって言ってよ

抱きしめられないじゃん」



「じゃあ、寒い」



白い息が空に上がった


宙が後ろから抱きしめてくれた



「綺麗だね…」



「うん、綺麗だね…」



鼻がツーンて痛くなる



「晴夏だよ…綺麗なの」



「ん?

宙、夏じゃないのに、熱いよ」



「うん、オレも…」



冬も

宙が一緒なら

寒くない