「宙、暑いね
アイス食べよ!」
「なに?急に
…
もぉ、いいの?
挨拶は、すんだの?」
「うん」
「長かったけど
なんて言ってたの?」
「宙の話、した」
「え、オレ?
やきもち妬かれたりしないかな?」
「うん
妬くかもね…
宙は?やきもち妬かないの?」
「んー…
仕方ないよ
晴夏の好きな人には敵わないって思ってる」
宙は
そぉ思ってるけど…
「そーかな?
宙のことも、なかなか好きだよ」
「え?」
私
宙が
好きだよ
「宙、ありがと
いつも一緒にいてくれて…
…
ずっと一緒にいてほしい
ずっと一緒にいたい
…
これからもっと好きになるからね」
京都の夏の空の下
「晴夏
暑いね、今日」
宙が照れくさそうに
額の汗を拭った
「夏だからね」
蝉の声が煩いくらい鳴り響く
夏だね
この音も
ひとりで来た時は
気付けないくらい
切なかった
「晴夏
オレも好きだよ
もっと、好きになってほしい」
胸が熱くなった
「宙、暑いね」
「夏だからね」
「夏って、いいね」
「うん、オレは好き」
夏が嫌いだった
あの人がいなくなった夏だから
「宙
暑いけど、手繋ぎたいな…」
「仕方ないな〜
夏だしね」
宙が笑いながら手を繋いでくれた
また熱くなる
宙に出会った夏から1年
宙といると
幸せだよ
私
「あ、晴夏、笑った
…
よかった
京都着いてから笑わなかったから…」
「そぉかな?」
あの人といる時みたいに
笑えてるかな?
「晴夏、かわいいよ」
もっと熱くなる
「かいらしいな」
あの人がよく言ってた
「え?晴夏、なに?」
「かいらしいな」
あの人がよく言うから
なにかな?って
ずっと気になってて意味を調べた
「なに?」
「ちゃんと日本語だよ」
「晴夏、発音合ってる?」
「うん、たぶんね」
かいらしいな
あの人の声を思い出した
「晴夏、愛してるよ」
宙の声
「え…」
「日本語だけど、通じなかった?」
「もぉ…宙
熱くなるから、やめて」
「じゃあ、もぉ言わないね」
ーーー
唇が重なって
また熱くなる
熱くなったふたりの間を
夏の風が通り過ぎた
あの人が
通ったかな?
「宙
暑いからアイス食べよ!」



