「どーぞ!」
「おじゃまします」
オレのアパートと変わらない広さの部屋だった
甘い匂いがした
大学に入学してからも女性と話す機会は
ほとんどなくて
友達に誘われる合コンも断わってたら
もぉ誘われなくなった
出会っても意味がない
卒業したら帰らなきゃいけない
結婚して家業を継がなければならない
彼女ができても
意味がない
唯一話す女性は君だった
話すって言っても
少し話しただけ
そんな君の部屋に
こんな簡単に来てもいいのか
「あ、座って!
雅、先におでん食べる?」
「え、うん…」
「私、先にアイス食べるね!」
「おでん冷めちゃうよ」
「好きな物は先に食べないと
弟と妹に取られちゃうから
先に食べるクセがついてて…」
「かわいいね」
「え?」
「あ…いや…」
標準語で口に出てしまって焦った



