君と一緒に大学の学習室で話した
君は夏休みはバイトで忙しいと言った
家庭教師とコンビニを掛け持ってるらしい
「海やら花火やら行かへんの?」
「うん、行く人いないし…
暑いし…」
「暑いの苦手なん?」
「うん
夏生まれなんだけどね」
「そうやろな思た」
「ん?なんで?」
「名前…晴夏やさかい…」
「私の名前、知ってたの?」
「知っとった」
なんとなく君が気になってて
名前を見た時
ピッタリな名前だな…って思った記憶がある
今日みたいに晴れた夏
君の笑顔みたいだった
「雅(まさり)の言葉、何語?」
君もオレの名前を知ってた
しかも雅って自然に呼んだ
少し驚いた
「え、京都弁やけど」
「日本語なんだ
日本て広いね
いつか行ってみたいな」
「来たことあらへん?」
「ん?あらへん?」
「今度おいで」
「今のは、わかった!
うん!今度行くね」
君が笑って
なんだか恥ずかしくなった
「オレの名前、知っとったん?」
「うん、知っとった!
エリカの彼氏がそぉ呼んでたから」
オレのマネをする君がかわいかった
「字も知っとる?
まさりって、どぉ書くん?て
よう聞かれるさかい」
「うん、知ってるよ
あ、手出して!」
『雅』
君の細い指がオレの手のひらをなぞった
「合ってるでしょ!
友達にいたの
同じ字の子が
でも、みやびちゃんて言うの」
「あー…よう間違えられる」
「ねぇ、私は〜が好きですって
なんて言うの?」
「うちは〜が好きどす」
誰に言うの?
誰かに使わないでほしいな
そう思った
「うちはアイスが好きどす」
「なんや…」
ホッとした
「暑いから、一緒に食べて帰ろ」
「うん」
結局まだ暑いのに
君と外に出た



