宙くんの頬に手を伸ばした

宙くんに触れたくなった



私の手を温かい涙が伝った

宙くんも泣いてた



「宙くん…

もっと、好きになるよ…」



「うん…いいよ…」



「宙くん

愛しても、いいの?」



「うん…いいよ…

晴夏が、幸せなら…
オレも…幸せだから…」



涙で宙くんが滲む



「宙くん…
今日は、抱きしめてくれないの?

抱きしめてよ…」



「うん…」



私を抱きしめてくれた宙くんの腕は

いつもと違った



自信なさそうに

震えてた



「ごめん…

あの人の代わりになれなくて…

オレじゃ…
晴夏を笑顔にできない

今日、晴夏を、抱きしめるのこわかった
ごめん…ごめんね…」



違うよ

宙くん…



「宙くん…

宙くんは
あの人の、代わりなんかじゃないよ…」



私の愛したあの人は

あの人しかいなくて



「宙くん…

宙くんは、宙くんだよ

辛かったでしょ…

寂しかったよね…

いつも支えてくれて、ありがとう…」



宙くんは

あの人の

代わりなんかじゃない



「宙くん…

私、宙くんと幸せになりたい

私、宙くんが、好きだよ…

私も…愛しても…いいの?

好きになっても…いいの?

宙くんのこと…」



私をいつも抱きしめてくれる

宙くんが



私を大切って言ってくれる

宙くんが



いつの間にか

愛おしかった



宙くんと

笑いたい



宙くんと

幸せになりたい



宙くんにも

幸せになってほしい



震えながら私を抱きしめてくれる宙くんを

抱きしめた



「宙くん…
出会ってくれて…ありがとう…

私も
宙くんが…大切だよ…」



「晴夏…


ホントに…?」



「うん…

宙くん、好きだよ

もっと、愛してほしいよ」



「晴夏…」



聞こえたのは

あの人の声じゃなくて



宙くんの声だった



「宙くん…

宙くんを、愛しても…いいですか?」



「うん…

オレも、愛してる…

晴夏…」



ーーー



震えながら

重なった唇



ずっと寂しかったね

ずっと辛くさせてた



なのに宙くんは

私にあの人を愛し続けていいって

言ってくれた



忘れなくてもいいって

言ってくれた



宙くんが届けてくれた手紙

あの人の気持ちは嬉しかった



でもね

それを届けてくれた宙くんの気持ちの方が

ずっと嬉しかった



出会ってくれて

ありがとう



出会わせてくれて

ありがとう



あの人をずっと愛してる限り

私はずっと笑うことはないと思う



笑って

幸せになってほしい



あの人が言ってくれるから

私は…



宙くんと笑いたい



幸せだよって

空から見てるあの人に伝えたい