「宙くん…
…
ありがとう」
「うん…
もっと好きになった?
あの人のこと…」
穏やかな宙くんの声が聞こえた
また涙が出た
私の大好きなあの人は
もぉこの世界にはいない
手を伸ばしても届くことはない
優しいあの腕で
抱きしめてくれることは
もぉない
いくら
もっと愛しても
見返りはない
私を好きだと言ってくれた宙くんも
私と同じなのかもしれない
見返りの無い愛
報われない愛情
宙くんは
ずっとどんな気持ちだった?
いつまでもあの人を愛する私を
どんな気持ちで見てた?
いつも支えてくれた
いつも心配してくれた
いつも愛してくれた
あの人の代わりに
どんな気持ちで隣にいた?
どんな気持ちで「好きだよ」って
返事のない告白をしてくれた?
もっと好きになった?
なんでそんなに穏やかで温かくいられるの?
「いい写真だね…」
封筒の写真を見ながら
宙くんが言った
「こんな笑ってる晴夏
オレ、見たことない
…
やっぱり
オレじゃ、ダメなんだな…って
…
オレは一生見れないんだろうな…って
…
大好きだったんだね
…
愛してたんだね」
あの人と別れてから
心から笑えなくなった
写真を見て
私ってこんなに笑えるんだ…って
思い出した
あの人との思い出が
また蘇る
「宙くん…
私、あの人をもっと愛しても
いいのかな…?」
「うん、いいよ…
まだ忘れられないんでしょ
…
晴夏が好きなだけ
あの人を愛したらいい」
「一生、あの人を、愛してても、いいの?」
「うん…
…
きっと、空から晴夏を見てるよ
…
晴夏があの人を愛して、幸せなら…
きっと彼も、幸せだよ…」
宙くんの頬にも涙が伝うように見える
私の涙かな?
「宙くん…
…
宙くんは…?」
宙くんは
幸せに
なれるの?
「それでもオレは
…
晴夏が好きだよ…」
穏やかだった宙くんの声が
震えて耳に届いた



