『晴
元気ですか?
晴、オレは恋愛してはいけない人間だった
知ってて晴を好きになった
京都から出る時
大学の4年で京都に戻って
家業を継ぐ約束を親としてた
オレには親同士が決めた許婚がいて
その人と結婚することも決まってた
それなのにオレは
晴を好きになった
晴を愛してしまった
京都に戻らずに
晴と生涯生きていこうとも何度も考えた
でも家を捨てれなかった
本当にごめん
いつかどんな形でも晴とまた出会えたら…
そんなことすら考えてしまう
そしたらまた
晴を傷付けることになるかもしれない
会ったらきっと
晴は幸せにならない
どうか晴が幸せに暮らしていますように…
どうか来世で晴とまた出会えますように…
生涯オレが愛したのは晴だけだった
信じて、晴
大好きだった
今でも愛してる
今日も明日も
オレは晴しかいないから
晴
またいつか会おうね
その時、晴が笑ってたら
オレは幸せ
晴、笑って
晴の笑顔が大好きだった』
差出人の名前はなかったけど
確かにあの人の文字だった
「一周忌を終えて遺品整理をしてたら
引き出しから出てきたらしい
…
すぐに
献花台で花を手向ける晴夏を思い出したって
…
宿台帳の晴夏の名前を見て確信して
送ろうとも思ったらしいよ」
「だって…
あの人は、奥さんを好きだったんだよ
愛してたんだよ
だから…」
「書いてあるとおり、許婚で
旅館は今は次男が継いでるらしい
…
子供もいるって…」
「あの人の…子供…?」
「違う…
…
晴夏の大好きだった人は
本当に晴夏のことしか愛してなかったと思う」
本当に…?
好きな人がいるって…
もぉ私のこと、好きじゃないって…
あの人は言ったのに



