そんなことを思うリゼの心を見透かすように呆れ顔をしていた神官は真顔になりリゼに向かって語り始める。
「……私もな、成人する事が嫌だったよ。私の時はもう結婚相手が決まっていてね、私はどうしても彼との結婚は嫌だったんだ。」
 神官は思いだすように遠くを見るような目をして、話しを続ける。
「私の結婚相手はな、私が思いを寄せていた男の父親だったんだぜ、それを知ったときの絶望ときたらたまったもんじゃなかったよ。だから私は婚約が正式に決まる前に神殿に逃げたんだ。あんな老体に嫁ぐぐらいなら神様に身を捧げたほうがましだと思ってね」
 それを聞いてりぜはそういうものかもしれないと思いつつも自由を奪われた事に不便はなかったのかと思った。贅沢を捨てる事はかなりの苦労を伴うだろうし、神殿の暮らしはとてもじゃないが贅沢とはかけ離れているはず。それでも彼女は贅沢よりも自分らしく生きる道を選んだ。そんな彼女にリゼは尊敬の念を抱いた。かっこいい生き方だと思った。
「ねえ、あなたの名前を教えてくださるかしら?」
 神官の女性は少し戸惑いの表情を見せるが、被っていたフードを取り膝をつく。王女にたいしての敬意を表して「アルテラと申します。」と言った。
 フードを取ったアルテラは真っ赤な髪色をしていた美少女だった。リゼは思わず綺麗と呟くのだった。