りぜはそれがたまらなく嫌だった。もし、りぜに前世の記憶が残っていなければ、それが当たり前で、王家に生まれたことへの責務として甘んじて受けざる得なかったかもしれないが、そうもいかないのがリゼの思いだった。

 この思いの強さは、リゼとしてではなくて、前世の人格である田中理世によるものが大きい。田中理世は享年18歳で日本を去った。平凡な人生の中でオタク趣味に没頭して、好きになったのは二次元のゲームキャラクター。虐めなどといった凄惨な人生を過ごしたわけではないが、これといって親友もなく、誰かと恋をしたこともなければ恋バナすらしたこともない。そんな田中理世の記憶を持って生まれたリゼは誓いをたてた。
(私は恋愛をするんだ)