呆れ顔の神官がリゼの発言にたいして、ケラケラと笑いだした。それに対してりぜは不快な気持ちになり、強い口調で言った。
「何がそんなにおかしいのです?」
「いや、なにさ、私も同じだったなと思ってな」
「私と同じ?」
「ああ、そうさ、私もな、成人なんてしたくないと言って催事には参加しなかったんだよ。でもな、催事に参加しようとしまいが結局のところは何も変わらないんだよ」
「と、言いますと?」
訊かれて神官は当時の事を思い出し表情に陰りを落とした。
「この国では12歳を迎えたと同時に成人するってことだ」神官は吐き捨てるように言う。それを聞いてリゼもあきらめのような感情が芽生え、表情を暗くした。

 リゼが成人にこだわるのには訳があった。成人とはすなわち大人を意味する。大人になればそれ相応の責任がつきまとうものだった。特に王族ともなればその責任は庶民よりも重い。その重責を担うにあたりりぜは自信がなかった。と、いうよりも嫌だった。なにが嫌かというと王家にとって女子は政治利用にあてらると相場が決まっている。つまりは力ある貴族との繋がりに使われ、好きでもなければ顔を見たこともないどこぞの馬の骨ともわからない相手に嫁ぐことになる。