久遠がたどり着いた先は言うまでもなくウルカ王国であったが、王都周辺というよりも南東に広がる森林地帯に近かった。それ故に久遠の視界に見えるのは緑の綺麗な平原と、後方にある、鬱蒼と生い茂る森林であった。

 ウルカ王国南部森林地帯は言わば未開地であり、その生態系すらもウルカ王国は把握していないありさまだった。未開地を切り崩し領土を拡大していくのが本来、国としてはあるべき姿ではあったが、そう簡単に未開地に足を踏み入れる事は出来なかった。なぜなら魔物が生息しているからだである。それにあたり、未開地の開発は国を上げての国家事業であった。国家事業というのは金もかかり人員もいる。今のウルカ王国にそんなことに浪費するような財政力もなければ国としての体力もなかった。

 久遠が森林向かわず平原を王都に向かって歩を進めたのは正解だったのかもしれない。