そういうとリゼは小さな体躯を駆使して人混みを縫うように騒動の眼前まで身を乗り出していた。兵士の言ったとおり城門前では大立ち回りを行う少年の姿があった。黒い長い髪に女性と見間違えるほどの美少年だった。纏っている服はどう見ても着物に袴で裾が絞ってある。渡りの広いズボンというところだろうか?
リゼはその格好をみて、思わず叫んでしまった。
「ねえ、アルテラ、あれはサムライ、武士だわ」
言われてもアルテラはサムライという単語を初めて聞いたのでリゼの言っていることにピンと来ない。
「サムライですか?」と、訊き返すアルテラは不思議そうな顔を見せつつも警戒を色を強くして、腰に下げていたショートソードに手を添えていた。
もう一人の神官は身を挺してリゼを守るようにリゼの前に立つ。
「何するの、よく見えないじゃない」
視界を塞がれたリゼは目の前に立つ神官に文句を言ってどかせようとするも、神官は身体に力を込めた。それでもリゼはそれを上手く交わして神官の前にいった。
「危ないです。お下がり下さい」という神官にたいしてリゼは「大丈夫よ」と言い放つのだった。それを聞いたアルテラはやれやれといった感じに呆れ顔を見せると、とんだお転婆だと心で思うのだった。



