それからリゼは重い足取りを一歩ずつ城門に向けて歩き始めた。
 「あれは何でしょうか?」
 不意にもう一人の神官が二人に問いかけた。神官の指す方に目を向けると城門前には人だかりが出来ていた。少しすると後方から数人の足音がドタバタと聞こえる。何やら兵士が急いで城門に向かっているようだった。
 アルテラは如何にも新米といった若い兵士に呼びかけ兵士の足を止めた。アルテラが新米の兵士に声をかけたのは、職務になれたベテランでは無視される可能性が高いからだろう。
「どうしたのです?城門のほうが騒がしいようですが」
訊かれて新米の若い兵士は困り顔で沈黙した。アルテラはその様子を見て嘆息して、
「こちらにおりますはリゼ王女様です、これから成人の催事を行うために城門を通ります。危険があるなら教えていただかなくては困ります」
 アルテラはリゼの権威を振るった。新米兵士に隠れてリゼに詫びの会釈をするもその顔はいたずらな笑みを浮かべていた。王女様と聞いた新米兵士は失礼がないように敬礼し、「は、何やら城門に異国の者が無理やり入国しようとしたようでして、その者を捕らえるために向かっている所存でございます」
 兵士の言葉を訊いて神官は不安な顔を浮かべて、
「どうしましょうか?」とアルテラに尋ねた。アルテラも困ったような素振りを見せるもすぐにリゼが目を輝かせて言った。
「早く見に行きましょう」