ウルカ王国に百合のように美しい姫がいることは有名なはなしであるが、その少女が前世の記憶を持っていることは誰も知らない。

 少女の名前はリゼ。白髪で長く綺麗な髪。優しさが現れているような顔をしており、意思の強うそうな瞳は紫色をしている。ウルカ王国民のそのほとんどが青色の瞳をしていることからみてもリゼの瞳の色は珍しく好奇な眼で見られているのも確かなことだった。
 リゼは鏡を見るたびに思う。
(前世の名残なのかな?両親も姉も綺麗な青色の瞳だし、なんで私だけ紫色なんだろう)
 おつきのメイドがリゼの長い髪を櫛で丁寧にとかす。
「本当に綺麗な髪です」とおっべかを言うがリゼはそんな世辞を使われることが嫌いだった。なぜなら前世のリゼはどこにでもいる平凡な女子高生で、どちらかというと大人しい性格をしていて、褒められることに慣れていないからである。
 リゼはそんな世辞を使うメイドをからかおうと思い鏡の映る位置を変える。それに気付いメイドはすぐさま視線を逸らすために俯いた。怪しく光る紫色の瞳が怖いからであった。