ルージュに託したアマリリス





早速買い出しに出かけると、通い慣れたデパートメントのショーウィンドウが化粧品に変わっていた。

前までは確か洋服だったはず。




「……すごいな」


見覚えのあるロゴやパッケージデザインに、凛花の会社の商品だと気づくまでの時間は必要なかった。



凛花にLINEで報告する用にと、1枚だけ全体の写真を撮ってから、ウィンドウに近づいて、丁寧に飾られた1つ1つに目を向けてみると。



凛と誇らしげに背筋を伸ばして、こちらを向いている口紅が、ひとつ。


覗く色は、僅かにオレンジがかった深みのある赤で、凛花が愛用していた口紅の色によく似ていた。






「……あれ?この色って」



ハッとして、持ってきていたイベントの招待状と照らし合わせてみると。


……やはり、デザインされたアマリリスや、女性の唇を彩る色と同じだった。




はじめて招待状をみたときには、全体からあふれ出る凛花らしさに、この口紅の色が、あまりにも当然のことすぎて、同じものだとは気づかなかったんだろう。



添えられた注釈に目を向けると、間違いなくアマリリスからインスパイアされていた色で、色の名は、ハッピーメモリーというらしい。





「…幸せな思い出、ね」


俺に、圧倒的な印象を残した凛花の色が、"幸せな思い出" とか。運命のいたずらにさえ思えてくる。


同時に、凛花がひとつ目の夢を叶えるイベントで、この色を選んでくれることを嬉しくも思う。



この色以上に。
凛花以上に。


お互いが似合う色はない。
魅力を引き出す色は、ないのだから。



そのことも含めて、仕組まれた運命だとするならば。



「……運命にだって、絶対負けないからな」



思い出だけで終わらせたくない。


もうカタチは拘らないから、
彼女の…凛花の、1番の相方でいたい。




そうだ。


どうせ運命に立ち向かうのならば、ハッピーメモリーというらしい凛花色のアマリリスを、大量に抱えて会いに行こう。



自分の幸せは、自分で掴みに行きたいという、世界一かっこいい、彼女の元へと。






[ ルージュに託したアマリリス ]

- fin -






※作中にでてくる英文は、完全に作者独自の解釈によるものです。あたたかい目でご覧いただけますと幸いです。