地上の世界はどういうふうなんだろう。
陽の光が差さない地下で、ルドはベッドに横になりながら考えた。
暖かい太陽があって、新緑は青い空に映え、水のせせらぎ、小さい子達がはしゃぎまわる声…。
知識でしか知らない地上の世界。行ってみたいとは思うけれど自分には地下の世界がお似合いなんだと思うようにする。
そうじゃなければ自分の好奇心が抑えられないからだ。
「地上の世界…か。」
なんとなく呟いて近所の友人の家へ遊びに行く。住んでいる人間の数が少ない地下の世界では有名な変人科学者だ。
名前はヨハン。長年の腐れ縁だ。
5分ほどほんの少し荒れた道を歩くとヨハンの家に着く。
チャイムを鳴らしてすぐに扉が開く。
「やァやァやァ!!!よく来たネ!!!!あぁ待っていたよ、待っていたさ!!ボクの大好きな親友クン!!!」
「待っていたのは分かるが煩いぞヨハン?つい3週間前に会ったばかりだろ?」
ヨハンは俺の言葉を聞いてやれやれと言った様子で
「大好きなものにハ、ずっと側にいて欲しイって気持ちが君には分かんないのカイ?」
と呆れた顔をして、俺を家に招き入れた。
ヨハンの家は広い。だが、物が多い。とにかく多い。毎日研究と開発の繰返しだから物がどんどん増えてゆく。この間なんて、
「これで移動が楽チンになるヨ!!!!」
とか言って人が一人乗れる空中に浮く小型の舟を作り、設計ミスで壁に激突していた。
あれは笑った。
そんな事を思い出しているとヨハンの部屋に着く。一番でかいソファに座り、ぼぅっとしていると、ヨハンはこちらを見てニヤリと笑い
「ネェ、ルド、地上の世界の写真を見たくはないカイ?」
その時の俺の顔はヨハンにどういう風に写っていたんだろうか。