ふぅーっと落ち着くために一度深呼吸をしてから、トーマ様に向き直った。
「トーマ様どうして、こちらにいらしたのですか?」
「どうしてって……レティシア、キミをエスコートするためだよ?」
エスコート……?
たしかにパーティーでは、婚約者や親、兄弟がエスコートして入るのが普通。
だけど今回は特別だからと1人で入るのでは無かったの?
わたくしの知らない展開にあたふたしてしまう。
これは――夢!?そう思わずにはいられない。
「そろそろ行かないとなんだけど、その前に――レティ、誕生日おめでとう」
トーマ様はそう言って、わたくしの髪が崩れないように配慮しながら前髪に軽く触れるキスを落とした。
「……っ!?」
どんな状況!?
頭の理解が追いつかないまま、わたくしはされるがままにエスコートされて会場の前に向かってしまう。
――おかしい。絶対にこの状況はおかしい。
リオの記憶の中ではこんな状況無かった。



