まさか、わたくしのドレスを聞いてきたのはサラ様と被せるためではなく、自分が合わせるためだったと言うの?
「……とってもお似合いですわ」
わたくしの色を付けてくれているのも嬉しい。
でもこれから婚約破棄するのにわざわざ付けてくれたのかしら?破棄したあとネクタイをサラ様の色に変えるとか?
色んな疑問が浮かんでしまい、頭の中を埋めつくしてくる。
「レティも私の色を付けてくれたのだね」
トーマ様はそう言いながらわたくしに近づいて来て、胸元にあるリボンで作られた花を見て嬉しそうにしている。
今の……このトーマ様はどこまでが演技なの?
嬉しそうな顔が嘘だとは思えない。冷たさなんて微塵も感じられない。
「……トーマ様の婚約者ですから当然ですわ」
「ありがとう」
嬉しいのに、素直に喜べないわたくしはどうしてもツンとしてしまう。
トーマ様が優しいのはこれが最後――。
その魅力に惑わされてはダメ。後悔することになるのは分かっているのだから。



