「レティは私が来て迷惑だった?」
「そんなことありませんっ」
ギリギリまで、トーマ様の婚約者として会えるなんて嬉しい。
たとえ演技だとしても、わたくしの為に時間を作って下さったのだから。
「じゃあ私も一緒だよ。レティに会いたくて来たのだから、今は仕事のことは無しね……おかげでレティに触れることが出来たし……」
「えっ?」
今、最後なんと?小さい声で聞こえなかった。
「ううん、なんでもない。気にしないで」
何かを誤魔化すように、既に冷めてしまった紅茶を飲むトーマ様。
「あ、新しいお茶を入れさせます」
だいぶ時間が経ってしまっているから、カップだけでなく、ポットの中身も冷めてしまっているだろう。
「これでいいよ。せっかくレティとふたりきりの時間なのだから、もう少し私に付き合って?」
本当なら、いくら婚約しているとはいえ結婚していない男女がふたりきりになることは絶対にない。



