幼い頃からの決められた婚約者としてでは無く、わたくしはきちんと恋をしている。
トーマ様の長髪で透き通るような金色の髪。
いつもは後ろでひとつに束ねられている。そして、薄い紫の瞳――。
見つめられると虜になってしまう、性格だって紳士的な王子様だ。
初めて会った時に、わたくしはトーマ様の虜になり、恋をした。
だけど、リオの中のトーマ様への想いは、ラブよりもアイドル的な存在という認識が大きかった。
リオ曰く、“一番の推し”らしい。
それなら、リオの転生先であるわたくしも、トーマ様は“一番の推し”ということになる。
一番の推しで大好きな婚約者のトーマ様だけど、わたくし達は結ばれることの無い運命――。
今生きているこの世界が、本の中の世界ということにもビックリだ。
だけどそれ以上に、初恋が実らずに断罪されるという、変えることの出来ないこの運命を知ってしまった10歳のわたくしは、当時――悲しみに溢れていた。



