"溜まり場" と言う割には最近めっきり活気が無くなってきたその部屋は、潰れた中華食堂の二階にある。


去年まではなんだかんだ色々な奴らが出入りしていて、この辺りでも有名な場所だった。



だが、春頃からはどんどん人が減っていって、今では限られた数人が来たり来なかったりしながら、廃墟に近い様相を呈してきている。



それもこれも、勝手にここに寄り付かなくなって行った "海星" のせいだと、ミツルはわかっている。


口数も少なく、ほとんどの人間に冷たく素っ気ない男だが、容姿も恐ろしく整っていて、更にはこの男の側にいれば間違いない、などと漠然と思わせるカリスマ性を兼ね備えた男だった。



そんな海星の横にはいつも "ショウヘイ" がいて、中学の頃から、この二人はこの周辺地域の有名人であり、憧れと嫉妬の的であった。


ミツルはこの二人が出会った初期の頃からの "仲間" であり、この二人を中心に自然に出来たグループの最重要ポストを担っていると、自負していた。



直接言われた事は無いが、この大きくなって行ったグループに我関せずな二人の代わりに、良くまとめていたという自信もある。



あの二人を差し置いて"調子に乗ってる" 奴らや、他校の奴らを徹底的に追い詰めてやったりもした。


せっかく出来たこの溜まり場を過ごしやすい場所にする為に金も集めた。



なのにだんだんとミツルを鬱陶しそうな目で見るようになった海星とショウヘイに、理解してもらえないフラストレーションが溜まっていった。



ミツルの行動がエスカレートしていくのと比例するかの様に、まずはショウヘイが学校を辞めて仕事をすると言って溜まり場に来なくなり、海星は、"来る理由が無い" と言って寄り付かなくなって行った。



ミツルの中では、どちらも自分に対する酷い裏切り行為であり、海星に関しては理由も無く意味がわからないまま自分が放置された気持ちで、憧れや自尊心や自分の全てが否定され、拒否された様な絶望感さえ覚えた。