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「 え〜れなっ! 」


「 ……。  …なに?」


かつては唯一の友人だった彼女が、
久しぶりに話しかけて来た。


「最近調子どう?  何か元気なさそうだけど…。
何かあるなら、相談のるよ?」


"よく言う… "


最初に私を避ける様に促した張本人のくせに、自分が完全に優位に立ったと思うと途端に近寄って来る。


中学の頃もだ。


私の体操の成績が伸びだすと、いきなり周りを取り込んで私抜きの派閥を作った。


イジメまでは行かないが、仲間はずれは精神的にくる。

ショックで成績が落ち始めると、また仲間に入れてもらえた。


その前の一件が無ければ、すごく親身に支えてくれた友人と言う事になるだろう。


小さな頃から母に新体操中心の生活をさせられ、小学校高学年の頃には自分の中でもそれが当たり前の生活になっていた。


忙しい母と私に対して、父は次第に距離を置くようになり、いつの間にか父がいつ帰ってきていて、いつ居ないのかさえ把握出来なくなっていた。


中学に入る時に、新体操の名門のクラブに移動する為引越した。

無論、母と私だけだ。

父はそれを期に、より職場から近いアパートへ引越した。

単身赴任と言う名の別居だと言う事をさすがに理解した。


彼女とは、その新しいクラブからの仲で、近くの中学も同じだった。

私の新しい生活の全ての面倒を見てくれたと言っても過言では無いくらいの献身振りで、すぐに生活は新体操と彼女、"アミ" でいっぱいになった。


私は元々人付き合いの苦手な子供だ。


向こうからグイグイ来てくれるアミしか結局友達は出来ず、アミが近くに居なければ基本一人だ。

可愛くて愛想のいいアミは人気者で、いつも周りに人がいた。



中3の時、目がきつくて近寄りがたいと言われていた私が奇跡的に男子に告白されるという事件が起きた。


離れたクラスだったから交流は全くなかったが、バレーボール部のキャプテンでなかなか人気のある男子だった。


特に好きだった訳ではないが、バレーボールをしている姿が素敵だったので、告白をOKし遂に私には初彼氏が出来たのだ。


それを期に、私の周りには一時的に人が集まり始めた。
人気者の彼氏ができて、そこにみんな興味を持っただけだ。


私は勘違いをして、まるで自分が人気者になったかの様な錯覚を起こしてしまった。


経験したことの無い賑やかな日々に、すっかりアミの様子を見落としてしまっていた。