夜でもまだ気温の高い夏の繁華街の空気は淀んでいたが、中より数倍マシに感じる。

数十メートル先のバイクを停めた駐輪場所へ速歩きで向かうと、ショウヘイが追い付いてきた。

「  …お前はまだ残っててやれよ」

後ろを歩くショウヘイに声をかける。

「別にいいよ。 
パーティとか居心地悪い事この上ないだろ」

感覚が同じこの友人の言葉に、フッと笑みが溢れた。

「 …だよな?」

歩くスピードを落すと、ショウヘイが横に並んできた。

「それにしても、さっきのあの女、知ってる奴か?

お前が珍しくじーっと顔見てるから何事かと思ったわ」

以前適当に相手をした女の顔でさえ殆ど見ていなかった事を、ショウヘイは知っている。


「  どっかで見た事あるんだよな…

 …最近見たんだよ…   
 
 …どこだったかな…」

記憶を辿ってみるがなかなか思い出せない。

ポケットに手を突っ込んで歩きながら、さっきの女の顔を思い浮かべた。

目の下の泣きぼくろと、鼻の横のホクロが印象的な女だった。