あの後、明日から無職だと言うのに、
3軒目に〆のカラオケまで行ってしまった。


高校の時と同じノリでやらかしてしまう、翌日が休みの幼馴染とは恐ろしいものである。

卒業して7年も経つのに、あっという間にJK時代に心はタイムスリップしてしまった。



ーー あー、やばいやばい、節約しなきゃいけないのに、いきなり使いすぎちゃった。
戒めいましめ!! ーーー


終電で帰宅したマンションのエントランスの前で、ガサゴソとかばんの中の鍵を探った。


ーーー ちょっと待てよ…。 私無職になって、、家賃払えるの? ーーー



一日で生活を180度変える事件が、特大の大波のごとくバッサーっと振りかかってきて、一番切実な今後の衣食住については、頭の中からすこーんと抜け落ちていたのだ。


途端に気持が焦り出し、おまけに普段はすぐに見つかる家の鍵も見つからない。


エントランスのオートロックパネルの前で、ややしばらく一人あたふたし、やっと自宅のリビングに行き着いた時には、完全にお先真っ暗状態に陥っていた。


ーー この就職難の世の中… 
こんな中途半端な時期に社会の荒波に裸同然でペイっと放り出された、なんの武器も持たない丸腰の女なんて、雇ってくれる出版社が果たしてあるだろうか。

いや、待て。

そもそも出版社にこだわれるような立場ではないのでは?

そうだ。 

難しいといいつつも、数打ちゃどこか小さい出版社に引っかかって、あわよくば児童書なんか取り扱う部門があるところがあったりなんかしちゃって、おまけに絵本作家と関わって、仕事しながら絵本の勉強が出来るんじゃないかとか、そんな甘い考えが、漠然と頭の隅っことかにでもなかったか!


あった… あったのだ!
モヤっとしたものの中に、無意識に作り上げていたお花畑があるではないか!

そんなふわふわのお花畑で花をつんでる時間は無いのだ!切実に!

来月は貯金で家賃を払ったとしよう。

それはまぁいける。

再来月は?
生活費に貯金をどんどん崩していく生活が、いつまで続くのか検討もつかないのだ。


社長は今月分の給料は日割りでって言ってたけど。ーーー



「今月分って… 10日分しかないじゃない!!」