「うん!いいよ!美味しくなってる! 
佳乃ちゃんの人柄が見えるような、若くてクリアで、まろやかな味だね!」


若干の大袈裟は否めないが、昨日今日と努力した事が、ちゃんと実になっていると実感でさせてくれる様で、素直に嬉しくなった。



「けーっ! そうかー?!薄くてパンチが無いの間違いじゃないの〜?」

こういうタイミングで、こうやって落としてくる人である…


「ありがとうございます! これからも頑張れる糧になります!!」


「うん、うん!頑張って!応援してるからね!」



いつかゴローさんに、お世辞が言えないくらい唸らせる美味しい珈琲を入れよう! と一つ気合を入れた。

「俺が教えてんだけどね!」



ゴローさんの笑顔と優しさに、やる気と癒やしをいただき、その日は夕方6時で店を閉めた。

珈琲以外には終始テキトーな創太郎を尻目に、佳乃はきびきびと、あちらこちらの雑用や接客に奔走した。



こんなに狭い店内なのに、細かい所を見ると意外にもやる事が沢山あるのだ。


週に一度か二度来る、ちょっと柄が悪い、いかついおじさんの、"げんさん"。

商店街で精肉店をやっているおばさんの、"かずよさん"

あと、3人程一見さんが来店した。

この若干あやしい通りの、半地下のわかりづらい喫茶店にやってくる一見さんって、一体どんな人なんだろう… などと失礼な事を考えたが、来てくれることは良い事なので、ありがたくおもてなしした。


今日初めて会った常連さんの名前と特徴をメモに書き記し、もうちょっとダラダラしてから帰るという創太郎を残し帰路についた。



やはり帰りも経費で買った自転車は快適である。