地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達

「ほら、早く降りろ」


ちゃっと支払いを済ませ、さっさと降りた創太郎が急かす。


日が落ちてもう薄暗いというのを差し引いても、ここ一帯のイメージが一変することは無いだろう。

道路は狭く、電灯の灯りもなんとなく弱い。

人もまばらで、それが一癖、二癖ありそうな人達に見えるのは、ただの偏見だけではない気がする。


このあっけらかんと明るい叔父がやけに浮いて見えた。


まぁ、この叔父は二癖どころか、それを大股でニ、三歩飛び越えるくらいのクセの持主なのだが。


「さぁ、ここだ!この階段降りた地下が俺の店だぞ! 雰囲気あるだろ〜? 
このコンクリートにツタが絡んだコントラストが、都会の中で必死にしがみついて生き抜こうとする自然のいじらしさを感じて気に入ったんだ!」


「 …へぇ…」


地上3階建ての古いコンクリート打ちっぱなしのこじんまりとしたビルに、どこからともなくツタ植物が這い出して全体に絡みついている。


仄暗いこの一角を更に不気味に見せることに一役買っているようにしか見えない。


「ほら佳乃! 中入るぞ」


呆然とビルを見上げていると、ビルの細い入り口の横の、半地下のような店舗に続く短い階段をすでに降り始めている創太郎に大声で呼ばれた。


ーー この人、ひそひそ話とかできないだろうな… 

どうでもいい事を考えながら、げんなりした気持ちでのろのろと後についていった。