「 よっ! 久し振りだなぁー、 元気そうだなっ!  タレ目がまたより一層タレて美人になったんじゃないか?! んっ? いい男でもつかまえたか?」


ーー … より一層タレてって…  


危うく店内に入って来られては、長居されそうだと焦ったが、考えるより先に本能で店を飛び出していた。


「ちょっと そうちゃん! どうしたの?なんでここにいるの?!」


40過ぎの中年だが、がっしりと体は締まっていて、髪はボサボサ、顔は無精髭なのに、不思議と爽やかさすら醸し出すこの叔父は、いつ会っても15年も前の佳乃の小学生時代と全く印象が変わらない。

イケメン…イケオヤジ?
そんな部類に入るはずの顔なのに
なんだろう…。
残念だ。


「お前の友達いるだろ、あの体育会系の。」


「 …?  優希のこと?」


かろうじて創太郎が知ってる友達なんて、優希くらいなものだろう。
そもそも自信を持って友達と呼べる人など、優希以外にいないのだが。

しかも彼女は陸上のスポーツ推薦で高校に入った、生粋の体育会系だ。

「そ〜!そ〜!そう! 優希な! 
姉ちゃんにお前のマンションの場所聞いたんだけどお前出ないからさー、

優希の働いてる、あの〜、あれ〜…
こだわり商店? 

前教えてくれただろ、 

あそこ行ってみたら、ここでお前と待ち合わせしてるって聞いたからさ、ここで待ってようと思ったら、ちょうどよくお前が見えたから、時間と手間が省けたわ! ハハハ!」


「ちょちょちょちょっ! 私のマンション聞いたの?!お母さんから?!」

親族といえどもプライバシー侵害もいいところだと思う。

「うん、だってお前 職探してんだろ? で、俺んとこ手伝ってくれるって聞いたからさぁ! 
ありがとなっ! 俺も助かる、お前も助かる、奇跡のタイミングだろ! ハハハ!」


完全に色々間違っているが、間違いすぎてどこからどう手を付けたらいいのかわからない。


「いやいやいや、私手伝うなんて一言も言ってないし、それどころかお断りしたはずなんだけど!」


そうだ。はっきりと母には断ったはずだ。


「えぇ? 姉ちゃんに、佳乃は

 "いいよ" 

って言ってる、って聞いたぞ?」


ただでさえ濃い二重の瞳をギョッと大きく見開いて驚いている。


「え?! 
そんなはずないよ! ちゃんと私は、 

"この話は今はいい"  って… 」


 …。


ーーー今は…  いい…?   



「だから、  いいんだろ?」