やりたくもない携帯のパズルゲームなんて開いて、ただただズラしては消えるカラフルなピースを他人事のように眺めている。


時間が立つのが遅い。


アイスカフェラテは氷もすっかり溶けきって、ただのぬるい濁った水と化した。


今日はここで、優希と待ち合わせをしている。

優希がやってくる予定の時間まで、まだあと30分ある。

気心の知れた親友に、あっけらかんと笑って背中をバシバシ叩かれれば、この地を這うようなドン底の気分も少しは浮上するだろうか。


窓に向かう横並びのカウンター席で微動だにせず、ただ時間がすぎるのを待っていた。

普段は色白タレ目がちの柔らかい雰囲気を放つ佳乃だが、この時ばかりは暗然たるオーラを放っていたに違いない。



ーー コンコン… 
  …コンコンコンコンッ!



耳に入ってるはずの窓を叩く音だが、今やすべてが他人事のような気がして、首を上げるのも億劫だ。


ーーー ゴンゴンゴンゴンッ!!




『 あの… 多分 呼んでますよ?』


見かねた店内の客が軽く佳乃の肩を突いて、窓の外を指差した。


知らない人の指差す方を、無気力な表情のままやっと首を動かす。



「   …。 」 
 

ーーー は…? 


「    …!! 」


ガタンっ!!

「えぇっ!!!!」

盛大に音を立てて椅子から飛び上がった。


「なんでっ!?」


窓ごしに、ニカッ!と笑いながら手を降る中年、

振田 創太郎(ふりだ そうたろう)

そう、私の大鬼門である叔父が、子供の頃虫やカエルを掲げて楽しそうに全速力で追っかけてきたその時の表情のままそこに立ち、身振り手振りで私にアピールしている。



『よ〜〜しのっ!』


窓越しのくぐもった小さな声で、
確かに私の名を呼ぶのが聞こえた。