《 日向書房 》



ーーーき…っ 来た! 



電話だけで断られた出版社がほとんどの中、
わずかに面接までこぎつけた数少ない会社の一つだ。

無職になったあの日から、再就職活動を始めて早2週間。

今、この"日向書房"に断られたら、自宅から通勤圏内の出版社は、もう全滅と言えよう。


ーーー 神様 ご先祖様 守護霊、背後霊様!!
お願いしますっ!! 私に職をっ!!



人差し指に全身全霊をかけた意気込みに対して、メールは音もなく、そして呆気なく開封される。


《選考結果のご通知》

ごくりと一つ唾を飲み込み、画面を僅かにスクロールさせる。

《この度は弊社中途採用にご応募いただき誠にありがとうございます。

社内で慎重に検討した結果、誠に残念ながら 》



コト…ッ  と、携帯が手から落ちた。




この2週間の間に見飽きた文面だ。

もうこの先に書いてあることは見なくても読み上げることが出来る。



ーーー オワタ…


普段思い出しも使ったこともないネット用語が何故か頭の中に羅列して流れていく。


"オワタ" とはこのような時に使うのだろう…



サーーっと全身から食欲と気力が流れ落ちていく感覚。


この2週間で佳乃は3キロ痩せた。