きっかけは、ささないことだった。

私、白波 紗凪(シラナミ サナ)が筆箱を落としたとき、親友の金崎 結愛(カナザキ ユメ)が一緒に中身を拾ってくれた。

「もぅ〜!紗凪はドジだなぁ!ま、そんなとこが可愛いんだけど!」

「ごめんね。結愛ちゃん。」

「なーにいってんのよ!嫌だったらさっさと離れていってるんだよっ!」

「ありがとう!結愛ちゃん大好きー!」

「もぅ~!可愛いこと言っちゃって!私も大好きだよ!紗凪!」

そう言いながら、拾うのはいつものことだった。

でも、この時だけは違ったんだ。

「大丈夫?手伝うよ。」

そう、頭の上から聞こえてきた。
誰だろう?と思い、頭を上げると、さらっとした黒髪が頭に当たる。

「!?」

私は驚き、少し離れた。

そして、改めて見ると、モテモテ王子様の嘉川 瞬くんだった。

瞬くんは、

「はい、どうぞ。これからは落とさないように気をつけなよ。」

と言い、離れていった。