白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「ロゼ?」

「ダヴィッド様、私、少し気分が悪くなって来てしまいました。そろそろ――」

 そろそろ帰りましょう。

 ロゼリエッタがそう言い終わるより先に、サロンの空気が動く気配がした。

「畏れ多くもマーガス王太子殿下」

 今夜はマーガスが顔を見せているからか招待されているらしい。スタンレー公爵が発言権を求めるよう右手を挙げながら一歩前に進み出る。途端にロゼリエッタとダヴィッドをも含むサロン中の視線が公爵へと集まった。


 レミリアとマーガスに限らず、公爵が何を言わんとしているのか、この場にいる全員が分かってはいることだろう。マーガスと、その背後に控える仮面の騎士とをしきりに見やる。


 気遣うような婚約者の視線に穏やかな笑みで応え、マーガスはレミリアを右手で制した。彼女を背後に庇う自然な動作にロゼリエッタは目を奪われてしまう。

 羨望――否、もっとどす黒い感情であることを自覚している。


 ただの観客でしかないロゼリエッタの胸中をよそにマーガスが口を開いた。

「発言を許可しよう」

「ではご寛恕(かんじょ)に甘えさせていただきまして早速。そちらに控えし騎士殿の素性を、この場で明かしていただけないでしょうか」