白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「勝手、です……! クロード様も、レミリア殿下も、みんな、みんな勝手です!」

「ごめんなさい」

 ワンピースの肩口が濡れて、肌に張りつくのが分かった。

 レミリアの声も肩も小さく震えていた。泣いている。凛とした王女がロゼリエッタに詫びながら、はらはらと涙を零していた。

 その涙もきっと、とても美しいのだろう。


 ――だけど。


 レミリアが泣き濡れる姿が儚く、美しければ美しいほど、ロゼリエッタは醜い姿を晒してしまう。


 レミリアに泣かれたら、ロゼリエッタはこの想いを、怒りを、誰にぶつけたらいいのだろうか。

 涙にくれながらも詫びる美しい王女に、誰が自らの醜い感情を叩きつけることが出来るだろうか。

「許してなんて言わない。あなたは私を永遠に許さなくても、憎んでもいいの。あなたにはその権利がある」

 言われるまでもなくレミリアのことは許せない。許せないと思う。けれど、憎めるかと聞かれれば否と答える。

 憎めるならもっと前から憎んでいた。でもクロードの想いがレミリアにあると、そう気がついてしまったその時に憎むことができなかった以上、今さらだ。


 それにレミリアを憎んだところで、クロードは二度とロゼリエッタの元に帰っては来ない。みじめな想いがまた一つ増えるだけだった。


 ロゼリエッタは行き場のない想いを抱え、堪え切れずにしゃくりあげた。濡れた瞳から真珠のように大きな雫が一粒、レミリアの肩口へ落ちる。