白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 ロゼリエッタは咄嗟に彼女の纏うお仕着せの袖口に目を向ける。そこには赤いバラの飾りボタンが縫いつけられていた。レミリア付きであるという証だ。

「もちろんお帰りの際には王女殿下の名誉にかけ、カルヴァネス侯爵邸まで責任を持ってお送り致します。よろしいでしょうか」

 後半はどちらかと言えばロゼリエッタではなく、父や兄に向けた確認のようだった。二人はお互いに顔を見合わせ、ロゼリエッタを見やる。判断を一任するということらしい。


 ロゼリエッタは軽く唇を引き結び、「分かりました」と頷く。

 今日は体調が優れないとでも言って断れば良かっただろうか。でも、日を改めたところで事態はロゼリエッタに都合の良い方へと好転はしないのだろう。それならば、つらい思いをする日は少ない方がいい。

「ではお父様、お兄様。レミリア王女殿下の元に行って参ります」

「いってらっしゃい」

「ロゼを頼んだよアイリ」

「畏まりました」

 家族と再び別れの挨拶を交わし、ロゼリエッタは侍女の後をついて歩き出した。




 侍女は広い城内をロゼリエッタの歩く速度に合わせながらも、一切の迷いを見せずに進んで行く。

 父たちといた執務の為のフロアを出て回廊を渡り、夜会が開かれるサロンや晩餐会の開かれるバンケットホールのあるフロアも通り抜け、さらに回廊を歩いた。