白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 婚約を解消されること。

 婚約者が隣国で行方不明になること。

 親しい従兄が新しい婚約者に選ばれていたこと。

 元婚約者にスパイ疑惑がかけられていたこと。


 明日はこんな出来事が起こると、今この国に住まう貴族令嬢の誰が予感しながら生きているのか。

「先日の騒ぎも、わざと騒ぎを起こして自分たちの手で収拾を図ることで無関係を装おうとした。そういう見方をしている貴族も少なくはない」

「そんなの、嘘です。クロード様やレミリア王女殿下が、そのようなことをお考えになっているはずがありません」

 自分でも驚くほどの強さでロゼリエッタは否定していた。スタンレー公爵も予想外の反応だったのか片眼鏡の奥の目をわずかに見開いている。

「大きな声を上げ、申し訳ありません……」

 年頃の令嬢であるロゼリエッタが大きな声を出すのは感心できることではない。そのうえ、目上の立場である公爵相手となればなおさらだ。椅子に座ったまま深々と頭を下げて無礼を詫びれば、スタンレー公爵は軽く手を振った。

「私の方こそロゼリエッタ嬢の気持ちも考えず無神経な発言だった。すまなかったね」

「公爵閣下のお気をわずらわせてしまい、恐れ入ります」