白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる





「……お兄様」

「ああ、目が覚めたのかい」

 目を開けると、心配そうにのぞきこむ兄と目が合った。

 ベッドに横たえられていることに気づき、記憶を手繰(たぐ)る。


 ああそうだ、思い出した。

 クロードが隣国の武力抗争に巻き込まれて行方不明になったと兄から聞いて、気を失ってしまったのだ。


 そしてまたクロードの為に四葉を探す夢を見ていた。

 いくら探したところで、ロゼリエッタが見つけた四葉ではクロードに幸運をもたらすことはできない。でもそんな未来を知らない幼いロゼリエッタは、クロードの為に探し続ける。

 同じ夢を、この先も何度も見るに違いなかった。

「お兄様、私」

 口を開けば兄の手が優しく頭を撫でた。

 どうしても言いたいことがあったわけでもない。ロゼリエッタは口を(つぐ)み、ただ兄の顔を見上げる。

 レオニールは大きく頷き、小さな子供をあやすようにロゼリエッタの頭を軽く叩いた。

「じゃあ僕は一度王城に戻るよ。今日は早めに帰って来られると思う」

「お仕事の邪魔をしてごめんなさい」

「気にしなくていいから、もうしばらく休んでるといいよ」

 ドアの前にじっと控えるアイリに後のことを託し、レオニールは部屋を出て行く。

 入れ替わるようにアイリがベッドの脇まで歩み寄り、目線を合わせるべく中腰で膝をついた。

「また少しお休みになられますか?」

 さほど乱れてはいないシーツを簡単に直しながら尋ねる。ロゼリエッタは横たわったまま首を振った。