白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 冷静になって考えればすぐ分かることだ。

 朝から必死に探しているようなものが、たった五分でそんな都合良く見つかるわけがない。それでも完全に日が沈んで辺りが暗くなるまでのことだろうけれど、侍女は何も言わず五分をゆうに超える時間を待っていてくれたのだ。


 無言で与えられた優しさに胸がいっぱいになる。

 ロゼリエッタは細く短い四葉の茎を両手でそっと包み込んだ。四葉が幸運のシンボルと言われるのは人の温かな気持ちが結晶となっているからに違いない。そう思った。

「わがままを言って付き合わせて本当にごめんなさい」

「大丈夫ですよ。さ、せっかく見つけた四葉を失くしてしまわないうちに帰りましょう。風が出て参りました」

「うん」

 侍女に手を引かれて部屋に戻ると、厚い辞典の真ん中辺りに四葉を挟んで押し花を作る。そうして縫物など一度もしたことがないけれど、侍女に教えてもらって小さな巾着袋も作った。

 あとは四葉の押し花が完成したら台紙に貼って中に入れるだけだ。


 クロードは受け取ってくれるだろうか。

 期待と不安とで揺れる気持ちを抱えながら、ロゼリエッタはどこか歪な巾着袋を胸に押し当ててた。それから、クロードを想う心だけは偽りなく真っすぐに祈りを捧げる。


 どうか、良いことがありますように。