「お嬢様、そろそろ日が暮れてしまいます」
朝からずっと、休憩を取りつつもひたすら白詰草に埋もれて四葉を探すロゼリエッタの背に、年老いた侍女が躊躇いがちに声をかける。
日没を迎える前に部屋に戻らなければ、また体調を崩してしまうかもしれない。もしそんなことになったらロゼリエッタではなく彼女が父に叱られることだろう。
申し訳なさを感じつつも諦めたくなくて、ロゼリエッタは白詰草に半ば埋もれながら侍女に懇願する。
「あと五分だけ待って、お願い」
答えはすぐには返って来なかった。
侍女からしてみたら子供のわがままに振り回された挙句に主に叱られ、暇を出されることまではないにしろ、下手をしたら減給の憂き目に遭うかもしれないのだ。簡単に受け入れられることではないに違いない。
ややあって溜め息の気配が耳に届く。
「仕方ありませんね。ですが、あと五分以内に見つからなかったらまた明日以降にしましょう」
「ありがとう!」
お礼を言うのに顔を上げ、その時間さえ惜しくてすぐにまた視線を手元に落とす。今まで時間は限りなくあると思っていたけれど、あと五分だけになってしまった。そうとなれば一秒でも無駄にはしたくない。小さな白い指が土で汚れるのも厭わず、必死に青々と茂る葉をかき分けた。
クロードが次はいつ遊びに来てくれるのか分からない。家に来たとして、ロゼリエッタにも顔を見せてくれるとも限らなかった。それでもできるだけ早くクロードにお守りを渡したかったのだ。
それに、今日見つけられなかった四葉は明日になったら枯れてしまうかもしれない。そう思うと永遠に四葉を見つけられないような気がした。
焦りながらも注意深く探し続け、四枚に分かれた緑色の葉を見つける。傷つけないよう周りの葉を慎重に除ければ間違いない。ずっと探し求めていた四葉だ。
「見つけた!」
「よろしゅうございました」
侍女は優しい笑顔を見せた。喜びも束の間、ロゼリエッタは眉尻を下げる。
あと五分。その約束だったのに、いつの間にか太陽の位置はずいぶんと下の方に沈み込んでいた。