心が冷えて行くのと反比例して冴えて行く脳が、状況が現実のものであると徐々に理解しはじめる。理解はしても受け入れたくはなくて、世界が色と形を失って行った。

「嘘……。クロード様が、行方不明だなんて……嘘に決まってます……」

「ロゼ!」

 衝撃に身体がふらついて、椅子から落ちそうになる。慌てて駆け寄った兄に支えられ、ロゼリエッタはいやいやとかぶりを振った。


 お守りを渡した日のことを夢に見た日にそんな報せを受けるなんて、どんな巡り合わせなのだろうか。

 でも、お守りは子供騙しで何の意味もなかった。ああそれとも、元婚約者にもらった手作りのお守りなんて、とうの昔に捨ててしまっているだろうか。


 持っていても何の効果もないお守りを渡したこと。すぐに捨てられるお守りを渡したこと。どちらがましな結果なのだろう。


 最初からお守りなんて渡さなければ良かった。


 でも、それよりも。

「クロード、様……」

 好きでいることさえ許されないのなら、出会わなければ良かった。