白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 まるで、死んでしまうと分かっているかのような口ぶりだ。

 クロードは一人で何を諦め、何を受け入れているのか。

 本当にロゼリエッタのことを考えてくれているなら、もっと別の言葉があるはずだ。少なくともロゼリエッタ自身はそう信じている。だって欲しい言葉は彼女の中にあるのだ。


(だけど、クロード様はその言葉は決して下さらない)

 怒りがふつふつと込み上げて来た。

 たった一言をくれるだけで、いいのに。言葉も約束も、優しいものは何も与えたくはないから、手っ取り早く婚約を解消したいというのだろうか。


 両手を強く握りしめても、内側から溢れる感情を抑えることはできなかった。とうとう涙がこぼれ落ちる。

「私の為に帰って来て下さると、そう約束しては下さらないのですか……!」

 初めてクロードの前で大きな声を出した次の瞬間、ロゼリエッタの身体が引き寄せられた。

 何が起こったのか理解できず、瞳をしばたたかせる。そうして、自らを包み込む温かで逞しい感触に、クロードに抱きしめられているのだと分かった。だけど抱きしめられた理由は分からないままだ。

「クロ……ド、様……?」

「ロゼ。――ロゼリエッタ」