公爵とて、敵意をぶつけられた程度で怯むわけでもない。

 レミリアは「もちろん」と肯定しながら追及を続けた。

「あの場にいたのは、わたくしが信用する侍女たちだけです。そんな彼女たちが何故、主であるわたくしではなく公爵にロゼリエッタ嬢のハンカチを渡したのか――疑問に思うのは当然でしょう?」

「それは確かに、こちらの言葉が足りませんでした。謹んでお詫び申し上げます。正確には騒ぎの後、掃除を済ませに来た侍女より受け取ったのです」

「その侍女の顔か名前は覚えていて?」

「申し訳ございません。あいにく」

 公爵はやはり芝居でもしているかのように大仰な仕草で肩をすくめる。

「では次の質問をしましょう。公爵はどうして、そのハンカチがロゼリエッタ嬢のものだと判断なさったのかお聞かせ下さる?」

「陛下に提出致しました、ロゼリエッタ嬢の署名の入った封筒と一緒でしたので。どちらも彼女の持ち物だと捉えることは妥当な流れかと存じます」

「そのような物が二つも落ちていたことを疑問には思わなかったのかしら。我が国をとても強く憂いて下さっている公爵ですもの。偶然会った侍女から渡されたのなら、公爵がわたくしや陛下に知らせるべきではなくて?」

 すると公爵はさも悲しげな表情をロゼリエッタに向けた。