白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 王の許可を得たスタンレー公爵は、勝ち戦から凱旋する英雄さながらの力強さで部屋の奥へと歩を進めた。

 途中、その視線がクロードと交錯する。

 ロゼリエッタの位置からでは公爵の表情の全ては見えなかったけれど、唇の端が酷薄そうにつり上がっているのは見えた、

「証拠は、こちらの二点となります」

 スタンレー公爵は上着の内側から封筒と、白い布とを取り出す。

 遠目ではあるけれど、おそらくは"ロゼリエッタがマーガスへの想いを認めた"とされる手紙だろう。布が何かはよく分からない。ただ、ひどくいやな予感がした。


 背筋を冷たいものが流れ落ちて行く。

 再びクロードを見やった。

 スタンレー公爵の背中に向けられた目は何の変化もないままだ。ロゼリエッタは自分の手を握りしめた。


 二つの証拠を衛兵に手渡し、スタンレー公爵にとってはやはり勝ち戦であるのだろう。勝ちどきを上げるかのように高らかに告げる。

「マーガス王太子殿下に送った手紙と――このハンカチが現場に落ちていたと。場に居合わせた侍女から預かっております」

 ロゼリエッタは目を見開いた。


 衛兵の手から王の元に渡るその時、確かに見覚えのある刺繍が目に入った。

 そのハンカチがロゼリエッタの持ち物であることに間違いない。

 けれど、何よりも衝撃を受けたのは――。


 自分の為に泣いてくれたアイリに貸したハンカチだったからだ。