白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 話の食い違いに国王が訝しげに眉を寄せた。

 ふと、何かを思い出したかのように目線を動かす。

「衛兵の甲冑が盗難に遭ったとの報告を受けている。あれは……先月の夜会の翌日だったか」

 ロゼリエッタの無実は王によって証明されようとしている。

 そうしたらクロードが罪を肩代わりする必要はどこにもない。


 守ってくれなくて大丈夫なのだと、そうクロードに届いて欲しい一心がロゼリエッタの背中を押し、饒舌にした。

「その夜会には、わたくしもクロード様のエスコートにて参列させていただいておりました。途中で西門にて騒動が起こり、クロード様はレミリア王女殿下のご指示でそちらに向かっております」

「王女レミリアよ、ロゼリエッタ嬢の証言に相違はないか」

「確かに、わたくしがクロードに命じました」

 ロゼリエッタに暗殺未遂の罪を着せようとした何者かがいる。

 そして、その何者かは甲冑の窃盗犯と繋がっていることは疑いようもない。

 クロードには甲冑を盗むことは不可能だった以上、全く別の第三者が関わっていることもあきらかだった。


 ――けれど。

「陛下。その者の言葉を信じてはなりません」