白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「聞いての通りロゼリエッタ嬢、そなたが噛んでいるというのは初耳だ。知っていたのなら、そなたもまたクロードと共に裁きを受ける場にいなければおかしい」
(おお)せの通りかと存じます」

 ロゼリエッタは物事が上手く運ぶ予感に胸の高鳴りを覚えた。


 国賓であり、王女の婚約者である隣国の王太子の暗殺を企てられたのだ。

 本来なら真っ先に知らされる立場の国王の耳に入ることが遅れるなど、断じてありえない。王の命の下にロゼリエッタは捕らえられて然るべき流れだ。

「二週間ほど前でしたでしょうか。領地へ療養に向かおうとしていたわたくしは馬車への襲撃を受け、マーガス殿下の暗殺を企てた罪で捕らえられそうになりました」

 アイリが身を挺して庇ってくれた記憶を胸の痛みと共に引き上げながら、ロゼリエッタは思い出す。

 あの時、ロゼリエッタを捕らえようとしていた男が何を着ていたか。

 忘れられるはずもない。

「実行された方々は、王宮に勤める衛兵の皆様が纏う甲冑と良く似たデザインのものを見につけていたと記憶しております。わたくしが実行犯だと衛兵の方々が(おっしゃ)ったのです。でも、それは陛下の勅命ではなかったということでしょうか」

「そのような命は出しておらぬ」