白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「ロゼ、一人では危ないわ」

 心配そうにレミリアが気遣う。でも、ここにいてもいいとは言ってくれない。近衛騎士の任務に関わることだ。当然の判断だろう。

 意地悪な気持ちから、レミリアが二人の時間を奪う為に仕組んだわけではないと、ロゼリエッタだって分かっている。


 私用ではなく公用なのだから仕方ない。

 だけど、こんな時に任務の話をしなくたっていいのに。クロードはレミリアに仕える騎士だ。普段から二人だけで話す機会はいくらだってある。

 そもそもクロードがいなければ困る状況なのだろうか。


 聞き分けのない子供なロゼリエッタが心の中で駄々をこねる。それをおくびにも出さずにロゼリエッタは笑顔のままレミリアに告げた。

「アイリが控えてくれていますから大丈夫です。それに、ホールとサロンを見るだけですから」

「本当なら誰か代わりの騎士を手配するべきところなのだけど、西門での騒ぎと警護とに人員を割いてしまっていて……ごめんなさいね」

 レミリアはさらに申し訳なさそうにクロードを横目で見やる。クロードと目を合わせることを阻止するよう、ロゼリエッタは慌てて言葉を紡いだ。

「ホール付近にも、巡回する騎士様が何人かいらっしゃるのでしょう?」

 レミリアの視線が思惑通りロゼリエッタに戻る。もちろんよ、とロゼリエッタの問いを肯定して大きく頷いた。