白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 ダヴィッドが理解してくれていると、ロゼリエッタも分かっている。

 分かっているから、ますます弱さだけが浮き彫りになる。


 でも、強くなるにはどうしたらいいのか。

 具体的な方法が、いつまでも分からないのだ。

「困ったな。俺が泣かせようとしてるみたいだ」

「そ、そういうわけでは」

「うん。お互いに分かっていても上手く伝わらないし、分かり合えてないともっと難しいものだね」

 柔らかく笑い、ダヴィッドがカンテラの位置を上げた。

 その言葉にロゼリエッタはどきりとする。

 後半部分はクロードとロゼリエッタのことを指しているのだろう。

「もっとちゃんとした場で話したいと思ってはいたんだけど、逆に今この場の方が二人きりで話やすい気がするし、少し付き合ってもらえるかな」

「はい」

 ロゼリエッタは頷いた。

 小さな頭が隣で力強く揺れる様子に、ダヴィッドも満足そうに頷く。

「俺と結婚しても、君はきっと幸福だと思ってくれると思う。だけどね、ロゼ。正直に言えば俺はもう一人の兄として、君に幸せになって欲しいと思ってる」

「兄、として」

 近い将来に伴侶になる相手だというのに、今でもなお夫婦という関係よりも兄妹という関係の方が胸に馴染んだ。

 理由なんか探すまでもない。

 ずっと、そうやって育って来た。そして、これからもそうやって生きて行くのだ。

「ロゼ。これはね、俺が漠然と思っているだけなんだけど根拠もあるし、可能性の一つとして聞いて欲しい」

「何でしょうか?」

 ともすれば俯きがちになる顔を上げ、ダヴィッドを見上げる。

 彼は前を向いていた。

 それが何だか今はひどく羨ましい。

 眩しそうに目を細めると、ロゼリエッタも前を向いた。