最後の四日間は、瞬く間に過ぎて行った。


 その間ロゼリエッタは自室から一歩も出ずに過ごした。

 食事はシェイドと一緒にダイニングで摂るよう、オードリーが何度も勧めてくれたけれど頑なに拒んだ。そうして、何も口にしないよりは……と折れさせた挙句、食事の度に部屋へと運ばせてしまった。

 オードリーに迷惑をかけていると自覚はあっても、どうしようもない。最後のわがままとして押し通し続けた。


 再び別れが待っているのに顔を合わせたってつらくなるだけだ。シェイドだって、会わずに済むのならその方がいいに決まっている。


 それを裏づけるよう、シェイドも同様に部屋を訪ねて来ることもなかった。

 もっとも、彼がこの部屋に足を踏み入れたのは二回しかない。最初に案内してくれた時と、ロゼリエッタが熱を出した時。熱を出してから一週間ほどしか経っていないのに、もうずいぶんと前の出来事に思えた。

「短い間だったけれど、傍にいてくれてありがとう。オードリーがいてくれて本当に良かった」

 そろそろダヴィッドが迎えに来る頃合いだ。

 お礼を言うことしかオードリーに報いることは出来ないけれど、それでも思いのまま伝えるとオードリーは両目を涙で潤ませながら首を振った。

「滅相もございません。ロゼリエッタ様のお世話が出来て、私もとても幸せでした」

「ありがとう、オードリー」

 ロゼリエッタは精一杯の笑みを浮かべ、静かにオードリーを促した。

 このままでは別れがたくなってしまう。

 クロードの傍にいたいと、聞き分けのない子供のように泣き叫びながらここに(うずくま)ってしまう。


 我慢せず、心のまま自由に振る舞えば良いと、何度思ったか分からない。

 本当に、これで最後なのだ。ロゼリエッタの心を伝えられる機会はもう二度と訪れることはない。