白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 元より、マーガスに無理を通してはじめた不安定な日々だ。長くは続けられず、遅かれ早かれ二人だけの歪な生活が終わることも承知していた。


 守りたいのなら、レミリアに預けてしまったらいい。

 そうしたらすぐに聴取の終わる侍女とも会わせてあげられた。

 なのにそうしなかったのは、永遠に会えなくなってしまう前に誰にも邪魔されることなく二人だけでいたい。クロードがそう望んだからだ。


 外とは隔絶された世界で、たった一人の大切な少女を守っているのだという偽りに塗れた幸せな日々を過ごすうち、この世界こそが現実なのだと錯覚してしまいそうになる。


 だがタイミングを見計らっていたかのようにマーガスから手紙が届いた。

 よほど急ぎの連絡があったことは察したものの、そこには吉報と凶報の二つが書き記されてあった。


 まず吉報は王弟フランツの身柄が拘束されたということだ。隣国で起きたクーデターに関与していた証拠も掴んでおり、この国の協力者の名が割れるも時間の問題らしい。

 事実ならそれは喜ばしいことだ。ひいき目を差し引いてもマーガスは良い国王になる。レミリアと共に国をさらに発展させ、豊かにして行くことだろう。


 だが一方で、凶報はシェイドの血の気を失わせた。

 やはり()の元にもまた、王弟フランツ逮捕の報せがもたらされたようだ。


 一週間以内にクロードが王弟派の人間だと名乗り出なければ、ロゼリエッタがマーガス暗殺の実行犯である証拠を提出してその罪をあかるみにする。


 スタンレー公爵からそう申し出があったと書かれていた。


 アレックス・スタンレー。

 彼は母の、婚約者だった。