白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 そういえば病気がちだと聞いている。全体的に小さく見えるのは、だからなのだろうか。

 今は初対面のクロードを警戒してわずかに表情を硬くしてはいるけれど、きっと大人になったら誰もが振り返る魅力的な女性になるだろう。打算や下心も何もなく自然に、目の前の少女が美しく成長した姿が脳裏に浮かんだ。


 ぎこちない挨拶をした後、これでもう見知らぬ相手ではないと安心したのか。わずかに表情を和らげたロゼリエッタに、一緒に遊ぼうと声をかけた。

 緑色の目がレオニールとクロードの間を何度も行き交う。気持ちも揺れているのが伝わって来た。あと少し押せば迷いもなくなるかもしれない。そう考え、さらに言葉を重ねる。


 レオニールの援護もあってロゼリエッタが遠慮がちに隣に座ると、クロードは人知れず安堵の息を吐いていた。



「ロゼリエッタ嬢、このカードはね……」

 手札の状況を教える度に小さな耳元に唇を寄せる。

 さすがに短時間でルールも把握しきっていない彼女には何が何だか意味不明な話に違いない。

 でもつまらないから聞きたくないと拒絶したりはしなかった。それが嬉しくて絵柄のモチーフや由来について、今はどうでもいいようなことさえ話したくなって来る。


 家から持って来たカードゲームは、母マチルダと何度か遊んだことがあるものだ。

 カードの一枚一枚を愛おしげに見つめ、彼女は言った。

『昔、大切な人(・・・・)と二人で遊んだの。クロードもいつか、そんな相手と一緒に遊べる日が来るといいわね』

 それで、親しくなれそうなレオニールと遊ぼうと思い持って来た。

 マチルダの"大切な人"が"恋人"だと気がついたのは、ずいぶんと後になってからのことだったけれど。