白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 四阿を左に見ながら小径をさらに進む。

 方向的に屋敷の裏側へと歩いて来たのだろうか。けれど裏門はないようで、その代わりと言っていいのか遥か前方に尖塔が見えた。

 鍛錬をするシェイドの元に行った時に見たものと同じものだろう。


 そして――王城を正門から入れば左後方に一部が見えているものだ。


 王都から出ていないのは分かっていた。

 さらに尖塔がこの大きさで見えるということは、王城にほど近い場所なのだろうか。ロゼリエッタは王城周辺の地図に詳しくないから分からないけれど父や兄、ダヴィッドなら分かるかもしれない。


 そう考えて、ダヴィッドが来た時のことをふと思い出す。


 ダヴィッドもあきらかに屋敷の所在地の明言を避けていた。知ったところでロゼリエッタに何もできないと思っていたけれど、もしかして何かできる場所なのではないだろうか。

(たとえば――王城内だとか)

 思いついた単語に自分でもどきりとした。

 尖塔の奥に連なる大きな建物は、正面から見た時の荘厳な雰囲気とはまた違う表情を持つ王城の一角だと気がついてしまった。


 確か王城内には離宮がいくつかあったはずだ。レミリアも子供の頃は離宮のうちの一つで暮らしていたと聞いたことがある。それならば今は使われていないものもあったとしても不思議ではない。


 何よりも王城内なら、そこに入るまでの警備の堅さは誰しもが知るところだ。そしてレミリアが協力しているのだから使われていない離宮を把握し、用立てることも可能ではあるだろう。――いや、レミリアが暮らしていた離宮だと考えるのがいちばん自然なのではないだろうか。